最近は忌中も玄関に「忌中」という紙を貼らない!?
昔の日本映画や田舎のほうで、忌中(仏教では49日、神道では50日以内に身内を亡くした人)の家には、玄関に「忌中」と書いた紙を貼ってあるのを目にしたことはありませんか?最近めっきり見なくなったあの「忌中」の紙。あれってどういう意味があって貼っているのでしょう?
<玄関に「忌中」と書いてある、あの紙はなに?>
玄関に「忌中」と書いた紙、あの紙は「忌中紙」といい、本来、その家で亡くなった方がいらっしゃることを知らせる為のものだと言われています。
これは「死=けがれ」と考え、「けがれ」は伝染する、と恐れられていました。よって「けがれ」により他の人々が感染しないよう、亡くなった方いることを告知し、「遺族は死のけがれに染まり、家に籠っています」と知らせたそうです。
そんな風習も、時代と共に変容し、今では「死=けがれ」とは捉えなくなったので、単に亡くなった方の居る家であることを知らせる告知板のようなものになっているようです。
本来は玄関に「忌中紙」を直接貼るものではなく、すだれを裏返しにし、その上に忌中の紙を貼ったそうです。それも時代と共にすだれは省略され、忌中紙のみ玄関に貼るか、額に入れて掛けるようになったようです。
この忌中紙を貼る期間は、本来百カ日忌までですが、今は四十九日忌迄とされています。(百カ日忌=卒哭忌(そっこくき)といい、愛する人が亡くなった悲しみで泣き明かした遺族の気持ちも落ち着く頃、という意味です)
<なぜ玄関に忌中紙を貼らなくなったの?>
上記が本来の姿ではありますが、最近では忌中でも、ほとんど玄関に「忌中紙」を貼った家を見かけなくなりました。それは何故なのでしょうか?
玄関に忌中紙を貼らなくなった理由 その1:地域の関係が希薄になったから
核家族化が進み、戸建てからマンション住まいになる家庭が増えたため、近所づきあいも希薄になり、身内での葬儀を行うことが多くなったので、周りに不幸があったことの告知を行う理由がなくなったから、との説があります。
玄関に忌中紙を貼らなくなった理由 その2:情報の伝達手段が変化したから
昔は回覧板(=地域の集合体(町内会など)の連絡事項を紙に書き、板に貼って回覧するもの)や家の玄関に「忌中紙」を貼ることで、ご近所に亡くなった旨を伝えていましたが、今では携帯電話やメールなどの伝達手段が発達したので、わざわざ玄関に忌中紙を貼る必要がなくなったから、との説もあります。
玄関に忌中紙を貼らなくなった理由 その3:空き巣の被害に遭い易いから
忌中紙の中には、自宅以外の式場の場所やお通夜、お葬式の日時を記載したものがあります。そうすると、
@お通夜・告別式の時間には自宅は誰もいなくなる
Aお通夜・告別式の後には御香典(=多額の現金)を手元に置いている
ということが、忌中紙を通じて外部に知られてしまいます。そうすると心無い人(泥棒、ですね)に、これ幸いと空き巣に入られやすくなってしまうのです。
最近は忌中紙だけでなく、回覧板にも個人情報保護や空き巣防止の観点から、お通夜・告別式の場所や時間については記載しなくなりました。物騒な時代になったものです。