忌中に着用する喪服の、外せないマナー5パターン
忌中(仏教では49日、神道では50日以内に身内を亡くした人)には、通夜、葬儀、告別式と、亡くなった方の死を悼み、お別れする厳粛な儀式が目白押しです。
戦前の日本では、忌中での喪服は「喪に服する」遺族だけが着用するマナーでしたが、戦後葬儀の形態が社会的な儀礼として位置づけられ、冠婚葬祭のマナーに関しての知識が急速に知られるようになったことから、参列者も喪服を着用するようになりました。
尚、現在では喪服といえば黒ですが、昔は白い喪服が主流でした。今でもその風習が続き、白の喪服を着用する地域もあるそうです。然しながら今回は、現在の主流の忌中に着用する5つの喪服のマナーにつき、今一度確認しようと思います。
まず、忌中に着用する喪服には、仏式・神式・キリスト教式共に正式な喪服と略式の服装があります。それを踏まえ、男性女性の正式な喪服、三親等までの正式な喪服、男性女性の略式の喪服の5パターンにつき、忌中の喪服マナーについてみてみましょう。
忌中に着用する喪服のマナー その1:男性の正式な喪服のマナー
1)洋装の場合:黒のフォーマルスーツ、白いワイシャツ、黒無地のネクタイ、靴や靴下及びベルトは黒です。ネクタイにはタイピンは付けないようにしましょう。
但し通夜は黒のフォーマルスーツではなく、紺やグレーのスーツでも問題ありません。葬儀・告別式の正装はモーニングコートが正装ですが、黒のフォーマルスーツが一般的です。
参考までに、モーニングコートを着用する場合は、縞のズボン、白いワイシャツ、モーニングと共布のシングルのチョッキ、黒無地のネクタイ、靴や靴下は黒。ベルトの代わりにサスペンダーを着用します。
学生、生徒、学童は制服が正式な喪服となります。喪に服する喪章を付けることもあります。
2)和装の場合: 黒羽二重染め抜き五つ紋付の羽織、馬乗り袴(仙台平か博多平のもの)、黒羽二重の五つ紋付の長着、下着や長襦袢は白か灰色の羽二重(茶系統でも可)。
6月〜9月は絽か紗の長着、絽の夏袴、白麻の長襦袢になります。羽織の紐は黒丸打ち組みにします。帯は角帯(博多織のもの)、草履は畳表で鼻緒は白か黒。足袋も白か黒です。扇子は持たないようにしましょう。
なお、和装の場合は喪服そのものが喪に服する意を表しているため、洋装のように喪章は付けませんので、ご注意を。
忌中に着用する喪服のマナー その2:女性の正式な喪服のマナー
1)洋装の場合: 黒のフォーマルスーツ(ワンピース)を着用します。艶のない生地にしてデザインもシンプルにし、襟元は詰め加減で、長そでが原則です。夏でもノースリーブやレース地、透ける素材は避けます。
スカートはひざ下長めで、ミニスカート・白系統の生地は不可です。ボタンやバックル、靴や鞄も光沢がない黒にします。アクセサリーは婚約指輪や結婚指輪以外は外しますが、つけたい場合は真珠の一連のネックレス程度にしましょう。
なお、本格的な喪服はアフタヌーンドレスが正式で、昼間は帽子(黒い縁なしのトーク型、キャップ型)を被り、ベールを掛けることがあります。黒の手袋もします。(本格的な喪服を着用するのは、今では皇室くらいですが・・・)
2)和装の場合: 黒無地の染め抜き五つ紋付の長着が正式の喪服で、男性同様6月〜9月は絽か紗になります。羽織は着ません。帯は黒繻子の丸帯、帯締めは黒の丸くげにし、悲しみを表現するため先を下にします。
帯揚げは黒の綸子。襦袢は白羽二重か白綸子にし、襟も白にします。草履は布製の黒草履か、畳表の黒い鼻緒のものにし、足袋はチャラコの白にします。通夜の場合は、寒色系の色無地に喪帯でも大丈夫です。
3)その他気を付けること: 喪服の時には「方化粧」といい、紅を差さないのがしきたりで、赤いマニュキュアやマスカラ、アイシャドーは避けます。口紅もリップクリーム程度かごく薄い色に抑えます。
化粧や髪型は控えめにして髪飾りは付けないようにしましょう。香水もつけないようにしましょう。洋装の際、パンプスの足音がカツカツ響かないように気を付けましょう(フローリングや大理石の床の場合、結構響きます)。
また、冬に革や毛皮のコートは「殺生」をイメージさせるという意味で、色が黒であれ、忌中の際の喪服着用時は身に着けないことがマナーです。
忌中に着用する喪服のマナー その3:男性の略式の喪服のマナー
ブラックスーツか濃紺、或はダークグレーなどのダークスーツに白いワイシャツ、黒いネクタイ、黒い靴が基本で小物は黒で統一します。靴下は黒が良いですが、紺でも大丈夫です。
勤務先から直接会葬するときは、朝はブラックスーツかダークスーツ、黒い靴で出勤し、黒ネクタイを持参します。そして参列する前に、ネクタイだけ黒ネクタイに取り換えれば、忌中の喪服としてのマナー違反にはなりませんね。
忌中に着用する喪服のマナー その4:女性の略式の喪服のマナー
1)洋装の場合: 黒・紺・茶色などの地味な生地で、シンプルなデザインのワンピースかスーツ、アンサンブルにしましょう。ブラウスを着るときはレースやフリルなどの装飾や肌が透けて見えるものは避けます。夏でも襟元の開いた服やノースリーブは慎みましょう。
2)和装の場合: 寒色系の無地に3つか1つの紋付の「半喪服」がありますが、色無地や小紋の地味な着物に黒の紋付の羽織でも大丈夫です。帯は無地のものにし、小物も黒で統一しましょう。ショールやコート(道行)は式場の前に脱ぎましょう。
3)その他気を付けること: 化粧やアクセサリー、コートや香水、パンプスや髪型などは正式な喪服のマナーの気を付けることと一緒です。
ストッキングも黒着用が一般的ですが、通夜の際は「突然の知らせに驚き、取るものも取りあえず駆けつけてきました!」という意味を持たせて、わざと黒ではなく肌色を着用するほうが良い、という方もいます。
忌中に着用する喪服のマナー その5:三親等までの正式な喪服のマナーとその他参列者の場合
喪服を着る親族は一般的に三親等まで(両親、祖父母、子、孫、ひ孫とその配偶者、兄弟姉妹、甥姪、故人の兄弟姉妹の配偶者、故人の叔父叔母とその配偶者)と言われています。喪服のマナーは正式・略式共に上記同様です。
その他参列者は、黒っぽい服を持っていない場合、手持ちの服で間に合わせても問題ありませんが、遺族やその親戚に対して弔意や思いやりを服で表せるよう、心がけましょう。
また、通夜の場合は、不幸を予測していたような印象を与えないように、わざと平服で参列したほうが良い、という方もいます。実際急に参列することになった場合も、極力アクセサリーを外したり、代用できる黒い小物に変えたりなど、極力気配りをお忘れなく。
以上が忌中に着用する喪服のマナーです。お悔やみの場では自分を表現するためのお洒落は全く必要ありません。上記を踏まえ、なぜこのような服を着て参列するのか、その意味を考え、大切な人を亡くした方の心中を察しながら、失礼のない服装をしたいものですね。